父に
井岡護
高くも低くもない空で
片肺のとりが最後まで
遠くの風を羽根で切る
音が確かに見えている
双眼鏡の視界をはこぶ
嘘のない世界へと飛ぶ
萎れた身体が夏に見た
押し花の様に剥離した
血織の帯を撒きながら
落ちてゆくあかき亡骸
この土はそれを優しく
残さずに飲込んでいく
今この空には白き手が
舞い踊る様な声だけが
オーバーロードの所迄
大らかに歌う最後まで
自由詩
父に
Copyright
井岡護
2008-04-04 18:49:00