しずかな時間
石瀬琳々
しずかな時間に光がうまれた
わたしの心に映り形作られるもの
それは木もれ陽 それはうた
あたたかな陽だまりの中で
わたしを見つめるあなたの瞳
どこか遠いその瞳
あなたの眼差しに海がひそんでいる
まぶしい波濤の彼方に
一羽の鳥がうかんでいる
どこへ飛んでいこうとしているの
風は茫洋 ひるがえる光の刃先
手をのべようとしても
わたしには届かない
わたしの足もとにひろがる深い断崖
小さく咲いた白い花を
あなたは見ただろうか
しずかな時間に影がうごめいている
わたしを誘惑する潮風の香り
鳥の声が耳をかすめてゆく
いますぐ飛び降りたなら
あなたは呑みこんでくれるだろうか
わたしのすべてを