「こんな日はくまちゃんに会いたいのに。」
rabbitfighter
口許から思わずこぼれそうになった思い出を飲み込む
誰も拾ってくれないから
こぼれてしまったらいなくなってしまうような気がして
いなくなってしまうような気がして
あわてて飲み込んだら
なんだか変な味がした
そういえば誰かが言っていた
さくらの花を見たときに感じる思いは
初恋の時に抱く思いに似てるんだって
初恋っていつだっけ
席替えのたびに隣になる女の子を一々好きになっていたせいで
初恋なんてとっくにどこかに忘れてきたんだと思ってたよ、くまちゃん。
思い出の話をしたいんだ
手漕ぎボートに乗りながら
堀の水に浮かんだりしながらさ
時間つぶしのためにするようなものじゃなくて
ゆっくりと思い出を味わいたいんだ
満開のさくらの下で
やさしい波に揺られながら
初恋の思い出を探しに行きたいんだ、くまちゃん。
それから少し泣いたりしようよ
泣くのは好きだよ
今じゃ初恋はいろんな恋と混じって溶けて
甘くてしょっぱくて苦くて辛くて
まったくなんともいえない味になってしまっているから
見上げたさくらが
水面にも映って
舞い落ちたさくらと混じって
そこらじゅうさくらだらけで
俺が泣いていたなんて誰にも言わないでくれよ、くまちゃん。
#題名だけのスレの士狼キメラさんのお題による即興詩