あーかいぶ
川口 掌



眠りから覚めた繰り返される生き物のなだらかな営みの音を聞く

流される眼差しの辿り着くその先にぽつりぽつりと滴る雨だれが
森の入口から順番に整列する椎や楢 栗 椚に少しずつ吸収される
陽だまりの揺らぎの中淡い緑を身に纏い一枚一枚丁寧に広げていく
目覚めと成長そのさなかに立ち止まる事無く空へ手を伸ばす


拾い集め抱え込む太陽の光小高い丘の上から溢れ出す伊吹
熱気のため大地を覆い立ち込める雲の隙間から覗く束の間の青
やがて青を消し去り祭りへと昇り続け始まりの咆哮輝き全てを引き裂く霹靂
熱く走り冷めるまで降り続け腹一杯になるまで食べつくし飲みつくす
潤いも渇きも忘れるほどに激しく続く夕立ち又は灼熱の日差し


散りゆく花は虫達の力を借り交配を終わらせた実りの始まり
繁る葉の奥から送り出され湧き上がるエネルギー
枝先に一つまた一つとぶら下がり次第次第に色づき大地を目指す
梢から梢へと飛び交い駆け回る小さな命が朝日と語り合う
目覚めの時から少しずつ蓄えた力をいまこの時と開かせる


記憶の中から無作為に取り出した思い出を一枚また一枚と宙に放る
忘れ去られる事の叶わぬ目覚めの時からの日々がはらはらと舞いながら
一番深い部屋を目指し少しずつ埋もれていくのかそれとも沈んでいくのか
いつしか取り出すことも叶わぬ奥深くにたまり降り積もる雪が傷跡を覆い隠す







自由詩 あーかいぶ Copyright 川口 掌 2008-04-02 11:10:05
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