ひとつ ざわめき
木立 悟
空たどる枝に
三つの時間が実る
土になれない枯葉が
芽を見つめる
まばたきのたびに 曇は増える
午後を横切るかけら におい
どこまでが空か 応えは返らず
ただ風があり 声を運ぶ
雨と曇のはざま
動く鳥 動かない鳥
遠すぎて 大きすぎて
到かなかったものに到くそのとき
森の道が終わり
生きものは水を囲み
月と曇を手に抄い
くちずさみくちずさみ波を呑む
弦の音が布へ落ちる
布はずっと鳴りつづけている
うたも楽器も置いてゆく背へ
布はずっと鳴りつづけている
くりかえし痛む陽に
さらに痛み乗せ鳥は軋る
ふたつになれないざわめきが
雨を遠ざけ また引き寄せる