1410
木屋 亞万

体温を感知できなくなった視力
塩気の多い体液が眼の根元
鼻の辺りに染みてくる
夕暮れに足を滑らせて
暮れないのなかへ

赤が穴に入ってくる
眼が鼻が口が耳が
塞がれていくことが
心地よいのだと
気付かなかったの

目頭が熱くなる
紅に染まる鼻
ひらひらと鼻はちり紙
夜桜は淡く強烈に開く
景色は塞がれ増えすぎた控えめ

優しく抱き締められたみたいだ
丁寧に骨抜きにされたみたいだ
たくさんの人が涙を流すのは
花のせいだというのを聞いた
花の妖精は赤系統の色が好みだとも


今しがた手元の心が赤く塗られた
さらには暮れないに突き落とされて
今は途方に暮れているところ

優しく抱きしめられたい手に
全てを塞がれてもいいの今は

ちりちりと骨は桜色に焦げて
肩甲骨から羽根となって抜けていく


自由詩 1410 Copyright 木屋 亞万 2008-04-01 01:12:57
notebook Home