ささやき
佐野権太
拡散する意識のなかで
三月の
浅すぎる海底に揺れている
季節は傾きながらも
横滑ることなく
白い軌跡を轢いてゆく
街路樹の切り口に
ひたり、しみ込む優しさ
僕はきっと
臆病なのだ
何ひとつ変わることのない
円い波形
ちいさな
君はいまごろ
小花柄のワンピースを胸にたたんで
窓を見てる
雫の静かに身を潜め
またひとつ
ひっそりとなくなってしまう
予感をこらえている
自由詩
ささやき
Copyright
佐野権太
2008-03-31 11:25:43
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