とむらいにあらず
木立 悟
冬の蜘蛛のかたちだけが
土の下にかがやいている
風や色とともに染み込み
夜を夜から浮かばせている
まぎれもないまちがいだけを
数少なに燃している
たなびくものが向かう先へ
ただようものもまた向かう
草の檻が鳴っている
夜にはひとつ花が咲く
鍵は長く壊れていて
時々なかには誰もいない
鉄錆の窪みを音は流れる
冬のままの光がひとつ
半ば沈みかけながら
あたたかな雨を見つめている
風が空へ吹き
皆うたうように反る
失われた声が昇り
見えなくなる
色が色のまま燃え残り
花を花で包んでいる
夜のふるえ 頬の熱さ
冷えたものたちを響かせてゆく