暗闇。
hope

 
 
 
(それこそ馬鹿みたいに祈るのです)



湿った身体は暗闇。
凍えてしまいそうな疲れた心が、馬鹿みたいに祈るのです。
誰のせいでもないから、もうすこしだけ誰かのせいにしておいてほしい。
それでも隠れる場所なんてないんだ。

此処は【少女】の心の中だけの物語だから。

だから【少女】は祈るのです。
信じるが故に、心脆くて崩れそうになる心が、崩れてしまわないようにと。



(黄昏が降りてくる)



黄昏が怖いから、
【少女】は、手放しました。
【手放す】ということを知りました。
【手放す】ということを憶えました。
【手放す】という辛さも。

そして【少女】は、祈ることをやめたのです。
すると【少女】を包んでいた暗闇は、少しだけ優しく笑ってくれました。
だから【少女】も、少しだけ笑ってみました。
でも、うまく笑えたのか心配になったりもしたのです。






(なんでそんなに穏やかなの?)

【少女】は【少年】にききました。
【少年】は暗闇の中で微笑んでいました。淡く、ぼんやり。それでもはっきりと。
【少女】は知っているのです。
暗闇とは、見たいものを隠すのではなく、本当は見たくないものを隠しているんだということを。
暗闇とは、【少女】が創り出した心の闇なんだということを。
だって、

此処は【少女】の心の中だけの物語だから。

(でしょ?)

再び【少女】は、【少年】にききました。

(どうやって此処に来たの?)

と。
【少年】は【少女】に言いました。
淡くて、ぼんやりでも、それでもやっぱりはっきりと。暗闇のずっと遠くまで届くくらいの小さな声で、それでも【少女】のためだけに聞こえるようにと、とっても優しく言いました。

「鍵の掛かった【心】は、もうアナタだけじゃ開けられないんだよ」










(空が晴れていた)

どこまでも深く、遠くまで。
もうアタシだけの物語じゃない。

知っていた、
ちゃんと憶えていた、
忘れていなかった。

空の色が、ちゃんと空色のままでいる。というコトを。

嬉しかった、
誰かに報せたかった、
このソラのイロを。
ねえ、見てよ!!

(ほらっ!!!!)

指差しながら振り返った指先は、真っ直ぐにどこまでも青く、蒼く、碧くて、
指差しながら振り返ったアタシは、間違いなくちゃんと、素直で、どこまでも真っ直ぐな笑顔で、
指差しながら振り返ったその先には、やっぱりアナタが微笑んでいました。






【少年】という名の、アナタは言いました。






「そっちの笑顔のほうが、ぜんぜん似合ってるよ」





ごめんね、

忘れてたんだ、



アナタが【だいすき】なアタシを。







自由詩 暗闇。 Copyright hope 2008-03-29 00:55:02
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