手紙
木屋 亞万
おはようの前に
貴女はもう起きていて
いただきますの前までに
ご飯を完成させている
いってきますの前には
弁当を手渡してくれる
小生はその後の貴女を知りません
ただいまの後は
夕飯を作る後ろ姿で
ごちそうさまの後には
食器を洗う後ろ姿で
おやすみの後に
見るのは服を畳む背中
日常の中で挨拶すら
ろくにしない小生は
視線を送る事すらないのです
日常茶飯事だからと
当然のように受け取る
日々の恩恵の影に
絶え間無い努力があるのを
気付いていなかったのです
思えば夜に電気が使えるのも
様々な食べ物を口にできるのも
それを支える人のおかげです
部屋もベッドも机もテレビも絨毯も
誰かが作ってくれたものです
自分一人で大きくなったような
世間知らずの小生は今すぐにでも
ありがとうと言うべきで
背中越しよりも
きちんと正面から
ただ感謝するよりも
行動をともなわせて
働くということは
声に出さない感謝の表現
とりあえず小生にとって
道行く人にありがとうを
言うよりも
生活を微力ながらも支える事の方が
感謝が伝わるように思うのです
誰かの日常に小生の品々が
貢献できたら欲を言えば
品々が誰かの宝物になる事
小生ができるささやかな恩返しは
とりあえず物を作る事なのです
しかしとりあえず貴女に伝えたい
有難うございました
これからも
お世話になります