帰ろう。早く帰ろう。
beebee



見送る駅のプラットホーム、
走り出す京浜東北線。
大森駅。
ぼくは立つ、
見送る駅のプラットホームに。
人は溢れ、
向かう、
改札口へと。
人は顔を赤め、
想う、
今日一日のことを、
家庭で過ごすこれからの時間を。

《 さあ、
  歩き出そう。
  誰が待っているわけでもない、
  自分の部屋へと。         》

歩き出そう。
人の波は
ぼくを熱く包み込み、
駅の外へ運び出す。
流れていく人の波。
次第に引いて行く人の波。
後に残るぼくは一人で立ち停まる。
そこに何も落ちてはいないし、
何も置き忘れられている訳でもない。

《 さあ何をしている。
  歩き出そう。     》

誰が待つ訳でもない
自分の部屋へと、
歩き出そう。
彼らは
帰る家を持っているのか、
立ち停まって見ていると、
ぼくは吸い込まれそうになる、
彼らの背に。
彼らと共に彼らの家へと
引き込まれて行く、
気がする。

《 ぼくはきっと一人なのかな? 》

帰ろう。
帰ろう。早く帰ろう。
誰が待つ訳でもない、
独りの部屋へ。
早く帰ろう。


自由詩 帰ろう。早く帰ろう。 Copyright beebee 2008-03-28 01:42:44
notebook Home 戻る  過去 未来
この文書は以下の文書グループに登録されています。
純情詩集