ゼロックスアニメーション
青木龍一郎

美少女アニメ見ててうわーかわいーなーって思ってたら
画面の端に僕が写ってたから 腰が抜けた

2次元アニメの隅の方に 実写で写りこんでいる3次元の現実
可愛い女の子たちの輪の中に 混ざれないがごとく隅に立っている
気持ちの悪い引きこもり
なんか 本当じっとしてて 一人だけ静止画みたいだ
心霊写真みたいだ

僕はそれを見て本当に泣きそうになった
なんか 僕 気持ち悪いなあと…

テレビに向かって僕は叫んだ
そんなとこに突っ立ってないで もっと いけよ と
そのアニメ女たちの輪の中に 飛び込んで 一緒にはしゃげよ と
僕がどんなに喉から血を出しながら叫んでも
テレビの中の僕は全く動かない
ひたすら下を向いてジッと立っている
情けなさ過ぎる

そのとき 僕の思いはアニメの中の僕に届いた

アニメの中の僕が歩き出したのだ
生まれたてのヒヨコのようにヨチヨチと
アニメの中の美少女キャラクターたちに向かって
一歩一歩 歩き始めたのだ

いいぞ!

僕はテレビを見つめた

近づいてくる青木龍一郎たちに気づき キモがるキャラクターたち
青木龍一郎は いわゆるツンデレ要員の生徒会長のキャラクターの肩をポンと叩いた
固まるツンデレ
僕はニヤリと不適な笑みをうかべて呟いた

「アニメ…」


「キャー!!」と悲鳴をあげる美少女キャラクターたち
僕も思わず 一緒になって テレビの前でキャー!と悲鳴をあげた
何が言いたいんだろう アニメ版青木龍一郎は!
アニメ?アニメって何?アニメがどうしたの?なんなの?
何を表現したくてあえて「アニメ」という単語をチョイスしたの?
パニックだ

満を持して口を開いた青木龍一郎 何を言い出すかと思えば…
意味が分からない
たぶん アニメの中の青木龍一郎もテンパってたんだろう
相当 緊張していて なんか頭が変になってたんだろう
目の前に アニメの美少女キャラクターがいる
だから 反射的に「アニメ…」と言ってしまった
きっとそうだ
キャラクターたちは画面から消え セル画の中に一人だけ残された青木龍一郎は
何か自分を納得させるかのように

ずっと「そうかそうか…」と一人で呟いていた


自由詩 ゼロックスアニメーション Copyright 青木龍一郎 2008-03-27 22:59:23
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