終わりにあらず
木立 悟





幾つかのまことを受け入れて
小さく分かれてゆく夜の
蒼を生む声
語らない声


水の階段
つくりかけの舟
川のはざまの
つくりかけの街


砂の上の螺旋
描きかえられてゆく光
無音をわたる
双つの雨


一本の樹の陰に
隠れる子らは増えつづけ
数千人も数万人も
もどかしそうに行き来している


ひとり抱いて笑みになり
ひとり抱いてさよならをする
鈴の音がして
すぐに消える


子らは何かを持っていて
輪を描くように置いてゆく
何も持たない子がひとりいて
輪のなかに湧く水に触れる


陽をほどき 陽をむすび
誰かの肩に 背にのせる
もっと花を摘み もっと花になる
もう一度 生きることができたら


唱を歩み 無音は還る
閉じた目から目へわたる
遠くの雨がゆうるり動き
幼い原を揺らしている


ひとりの子が壁に耳をあて
つくりかけの街を聴いている
明ける夜の長い影
径に重なりさざめいている


















自由詩 終わりにあらず Copyright 木立 悟 2008-03-27 14:29:30
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