小さな翼
よしおかさくら

何かが転がっていた
転がってきた
柔らかい何かを踏んだ
羽だらけの塊
小さな翼なのだった
踏んだのか
踏んだのか
振り返り見て見ないようにする
人通りの多い階段脇
誰も
立ち止まらない誰も

帰る道すがら考える
交通量が多いから
まだ飛べない子供
車にはねられて弾んで
歩道まで蹴られて
蹴られて踏まれて

私も踏んだ

私も踏んだ
柔らかかった

次の日も見かける
次の日も
次の日も
転がっている

空を飛ぶはずの翼
を踏み
命だったものを蹴り
葬ることを知らない



自由詩 小さな翼 Copyright よしおかさくら 2008-03-26 12:56:15
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