飛ぶ日
新谷みふゆ

眠くなって沈んでゆく 冬の空気の満ちた部屋
放り出されたのは歪んだ逆三角形
電柱の震える音が聞こえている

バランスが悪いから きみと一緒にいたいのかな
肩から逃げてゆく 空に消えた青い鳥
飛行機が最後を見えなくしてしまった

寒いとみんなまるくなるのに
電気をビリビリ発して ぼくはますます角張って
ニ角形の棘がきみを傷付けるから
温めたミルクにぼくを閉じ込めて

飛べない形で空を追う
膜を破って
苛立ちを拡げて 坂道を転げ飛ぶ
あぁ 外は又寒くなってきたね
空がいちだんと蒼を濃くしているね


目を閉じて耳も閉じて 届くのは沸騰する音
疲れた手をして 悲しみを握ったりするなよ
ひ と つ ひ と つ  きみの指を解いていく

鳥の声で泣いていた 生の切れそうな電球を
どうすることもできなかった小さな罪を
鋭角の胸に突き刺し 引き摺ってゆけば

きみの肌はやわらかく
頬をつつくと笑うのに かじかんで 軋んでいた
不器用な触れ方の 不完全な個体の
首筋には みつばちのささやきがあった

飛べない形で空を想う
毛布を脱いで
痩せた背に現れた肩胛(かいがら)骨が歌っている
あぁ 冬がすぐ其処まで来ているね
空気も絲を張り詰めたんだね


自由詩 飛ぶ日 Copyright 新谷みふゆ 2008-03-25 18:37:23
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