喜びでも悦びでも足りない
鎖骨

外交的であるように見えて実際
怖いくらいに内向的な人ですねと
いってくれた人がひとりだけ
ひとりだけいて
瞬間、殴られたかのような衝撃と電光が走って
眩暈を起こして呼吸も止まっていたと思う
その時はもう堪らなくなって
まともな返答もしないまま踵を返して
殆ど逃げるようにその場から離れたわけだけど
それは辛かったからではなくて
酷く嬉しかったからだった
それから暫くもしないうちに彼女は
嘘みたいだけど死んでしまったので
これからはもういない
目の前にして、あるいは何らかの関わりをもってみて
彼女を思い出させるような
言ってくれる人
言ってしまってもいいと思える人
この先も現れない気がする
現れなければいいと思っている



















自由詩 喜びでも悦びでも足りない Copyright 鎖骨 2008-03-25 01:51:16
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こころの、こえ。