スプーン
あおば

                 2000/04/21






死んだ君の眼を食べたいと思うことがある
白眼を向いてぼくを無視しているつもり
だけど120%意識しているのだろう
ちょっと横を向いた隙に
スプーンを眼の下の方から刺し込んで
目玉ごと掻き出して飲み込んでやる
一滴の汁も無駄に垂れないように
上手に啜るのは馴れた作法が必要で
庶民育ちの私には苦手なことだ
しかし
君のすべてが大好きだから
そのくらいの苦労は気にしない

死の床で静かに横たわる
ぼくの眼に君が見える
くたびれた顔をして
逃げ出したいような顔してるね
時間が経過して
何も残らないのを待っているのか

ぼくは君を食べてから
安心して死にたいと本気で思う
その、ほんの僅かな時間だけが
行き返る為の癒しだ
そんなことを考える
どこにでもいる
ごく普通の死人です




自由詩 スプーン Copyright あおば 2008-03-25 01:31:38
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