「バンブーソード」
ベンジャミン
高校二年で剣道三段のその生徒は
「30cmの棒があれば先生を倒せますよ」と
とても冷静な顔で言う
なのでシャーペンより長いものは
できるだけ持たせてはいけないと思っている
僕は六年前に過労で倒れて
今でも後遺症で手の震えが止まらない
それをできるだけ隠そうとしているのだが
さすがに剣道三段の観察力は
その瞳に隠された眼光より鋭い
「気づいた?」と
僕が軽く手をさすりながら聞くと
「はい、気づきました」と
あっさり返事が返ってきた
深夜のアニメで
そんな感じの剣道少女を描いたものを
僕は毎週見ていて
それを話題にすることも多い
何というか
キャラクターというのは大切で
僕は「先生」というキャラクターをつくり
普段はその枠の中に隠れているのだけれど
あまりにもあっさりと
そうも簡単に見抜かれてしまうと
もう隠す気も失せてしまう
だけどそういうのも良い
何の小細工もする必要が無い
その生徒はいつも一本をねらっているのだから
僕がつまらない冗談で「上段」とか言っても
軽く受け流されて逆に一本とらた気分になるし
だけどそういうのも良い
何も隠すことなく本当を見せられる気軽さが良い
そう思いながらも
ついつい難しい問題を出していることは
まだまだ隠していようと思う
何というか
(仕返しではない)