五線譜の橋
服部 剛
東口を出た歩道橋に
一人立つ
目の見えない
フルート吹きの奏でる
あめーじんぐぐれいすの
音色を前に
手押し車の老婆は通りすぎ
土産袋を持ったサラリーマンは通りすぎ
ハイヒールの女が通りすぎ
眼鏡の学ラン青年が通りすぎ
はしゃぐ女子高生等が通りすぎ
人の流れる川のほとりで
荷物を降ろした僕は佇み
日中亡き友の自宅に行き
骨壷の前で別れを告げた
ひと時を偲ぶ
彼の体が溶け去り
残された世界の広がりに
今・自分が立っており
鼓動を繰り返す胸に
手をあてる
数え切れない
靴音の響き
フルートの奏でる
あめーじんぐぐれいすに
ひと時の休符になった僕の蒼い魂と
音符になった人々の十色の魂をのせて
絶え間なく流れる旋律の川は
五線譜の歩道橋