孤独
井岡護
咲き戯れる桜の花を
四角い形に切り出した
小さな匣がそこにはあった
私以外の人にとっては
皆は思い思いに指を差し出し
匣の中に隠された
生糸の水に触れていた
私はそれを黙って見ていた
私の前で光の粒は精確にその速度を遅く
速くする 引き留める術もない 忙しなく思いのまま
私の右を左を下を 上を忙しなく踊るように
ああ私の前で光の粒は精確にその速度を
咲き戯れる桜の花が
どこにも見当たらない所だった
骨色の匣がそこにはあった
私は黙ってそれを見ていた
自由詩
孤独
Copyright
井岡護
2008-03-24 22:14:47