雀蛾
井岡護

くすみ汚れたその翅の
美しさのないさざなみの様な紋様の
幻惑 潤みきった私の
目がかつて切望した婦人の姿 雀蛾よ

そうやってお前は拒んでいた その
冷え切った身から刻み付ける響きの
出でていく事を 日々の依頼を聞き入れる事を
拒んでいた 声を押し出す事を

しかし視たのだ聴いたのだ 切りもなしに
お前は その氷った鼓膜に網膜に
贈り付けられる物たちの宝物を その脳骸に
仕舞い込み視たのだ聴いたのだ 忌々しい程に

雀蛾よ 歌わぬ者の充溢は決してないのに
まだ際限なく献上される供物を 空虚の中へ
捧げ続けているのか まるでガラクタの様に
雀蛾よ この梔子に眠る事はもういつまでもない


自由詩 雀蛾 Copyright 井岡護 2008-03-24 02:57:23
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