僕の名前は青木龍一郎って言うんですけど、そんな僕が軽い読み物を書いちゃいました(笑)
青木龍一郎
今、僕は寒さに震えている。
後ろから声が。
「こうだい君」
僕が後ろを振り向くと、日本人ではなさそうな少女がこちらを見てニヤニヤしている。
「誰ですか。こうだい君って。僕は青木龍一郎ですよ。誰ですか。こうだい君って」
僕は子供に目線を合わせることを知らないので、上から見下ろして話しかけた。
「誰だよ。こうだい君って。ふざけてるならさっさとママのところにお帰り。」
少女は話も聞かずに話しかける。
「こうだい君、詩とか書いてんの?」
おいてめえ!こうだいが苗字なのか名前なのか、はたまたミドルネームなのか知んねえけど
僕 は 青 木 龍 一 郎 だ ! !
僕が大声で叫んでみたものの、「あれ」と思った。
僕は本当に青木龍一郎なのか。自分は青木龍一郎だって思い込んでるだけで
本当はこうだい君なんじゃないのか?
僕は少女に聞いた。
「なんで僕をこうだい君だと思ったの?」
「きみがこうだい君だからに決まってるでしょ。
野口五郎見たら、『野口五郎だ』って思うでしょ。
ジャンポール・ベルモンド見たら『ジャンポール・ベルモンドだ』って思うでしょ。
私はきみ、こうだい君を見たから『こうだい君だ』と言った。
すごく簡単な話よ。」
うーん。まあ、当たり前の話だけど何か納得できない。
「こうだい君を見たから」って、僕が「こうだい君」であることが前提になってるのが僕と少女のズレなのだ。
少女は最後に言った。
「まあ、自分がどうとかそういうこと考え出したらキリが無いから。
自分が青木龍一郎だと思うならそれでいいじゃん。ね。
きみはこうだい君である必要も青木龍一郎である必要もないのだから。
じゃーね。バーイ」
少女はクルリと180度回転し、タタタタタとどっかかけていった。
僕は一人
「…青木龍一郎じゃないと駄目なんだよ…。」
と呟いた。気づけば寒さをすっかり忘れていた。
再び、乾いた寒さが肌を撫でる。
なんだか、突然自分が分からなくなった。
うーん、僕は自分とあんまり親しくないんじゃないか?
もう一人の自分が窓から押しかけてきても、そいつと和気あいあいと談笑できる自信が無くなった。
こういうときは、自分が自分であるということの確証が欲しいものだ。
僕は友達に電話をした。
「もしもし、友達?」
「おう、こうだい君か」
僕は思わず悲鳴をあげた。