スナフキン/豪邸/カフェ/かなしみ
rabbitfighter

スナフキン

買い置きのチョコレートが切れてしまって
買い足しに行かなければいけない
コンビニで立ち読みをしているスナフキンに会う
やあ、いい天気だね
一通り天気の話をすると
彼はまた手にした雑誌に戻り
僕はチョコレートを抱えてコンビニを出る
確かにいい天気だ
今日は
とてもいい天気だ

豪邸

いつもと違う道を通って家に帰ると
いつの間にか知らない家が建っている
そこにあった豪邸の持ち主のことは知らないが
その家に住んでいた猫とはよく話をした
売りに出されたということは聞いていたけど
結局買い手はつかず
かつてあった豪邸は取り壊され
後には建売の小さな家が並んだ
どの家も同じ形の
同じ色をした家で
玄関の脇の傘立てとか
止まっている車や自転車でしか区別できない
新しくここに住む人たちも
猫が好きだと良いのにと思う

カフェ

坂道を登ってカフェに行く
坂道を登りながらカフェに行く
何度も通った道だから
通いなれた道だ
優しく迎えられる
僕も誰かをやさしく迎える
ホームパーティーみたいだねと君が言った
まったくその通りだね
居心地のよさや
居心地の悪さ
帰り道はさびしい

かなしみ

そのかなしみが
どれだけ深くとも
あなたの方法は洗練されている
僕たちの情熱はいつも
あついまま静かに横たわる
細い道 長い影
夕焼けに胸が押しつぶされて
君は僕を地平線の上で抱きしめる
ここにいっしょにいてくれてありがとう
何もかもが顕わになる 
暮れる日の 薄暗がりの中で
まぶしすぎて見えなかったものたちすべてが
必然になる
今や僕たちは夜の中にいて
闇が満ちたのだと理解する
嘘や暴力や押し付けられた思想から
疎外された身体を取り戻した
夜はまた
君の姿を僕の目から奪うけど
この静けさのひそやかな情熱は
まったく信じるに足りるだろう
まだ夜は明けない
祈りの夜 


自由詩 スナフキン/豪邸/カフェ/かなしみ Copyright rabbitfighter 2008-03-23 16:58:14
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