春の骨格
塔野夏子

骨格だけの春が
幾体もおどっているよ
薄桃と薄青が
まじりあうあのあたり

もういないはずのひとと
話をしたんだ
そうだよ それは夢だった
けれど

粒子状に還元されてゆく情景
から
逃れようと
左手の指から順に
音符のように逃げてゆこうとする私

何処へ

薄桃と薄青が
まじりあうあのあたり
ちがうよ それは夢だった
だから

私の中を
水滴する情景から逃れようと
ふいに
かなしみが露頭する

ああ
骨格だけの春が
幾体もおどっているよ
おどりながら 遠くなってゆくよ





自由詩 春の骨格 Copyright 塔野夏子 2008-03-23 12:29:56
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