オリオン
乱太郎


オリオンのまばたきが
霞んで見える
蒼い夜の隙間から

一通の手紙が粉雪のように

宛先が書かれていない
差出人の名も書かれていない
薄い肌色の封筒

糊づけもされていないので
中身を取り出す


ありがとう
読んでくれて


それだけ

誰かのいたずら?
早春のいたずら?

風がなにか呟いて
去って行った

きっとあの人から
勝手に思い込んだら

まだ雪の溶けきらない
路地裏から
ふきのとうの声が
聞こえてきて

僕は透明な吐息で記した手紙を
オリオンに向かって送り返す


ありがとう
読ませていただいて


オリオンの白い歯が
こぼれた気がした


自由詩 オリオン Copyright 乱太郎 2008-03-22 17:11:18
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