月夜
燕(ツバメ)
「ただの人」に成り下がった 自分には
あの日放った金色の光は もはやなく
鈍色の影を身に纏っている
わたしは「ただの人」ではなかった
そう、何度も、何度も、何度も、何度も、
床にへばりついたまま
振り絞っても流れぬ涙を 手で拭い
身体を押し上げる冷たい床に抵抗する
空には満月
傍らには自分と似た笑顔を持つ男
彼の横顔を神々しく月明かりが照らす
そこには「ただの人」を甘んじて受け入れる
したたかさとも言える清清しさがある
「ただのひと」であるが故の自信
わたしは「ただの人」ではなかった
その記憶が わたしを鈍色にくすませる