帰り道
井岡護
馬なんかより よっぽど速い
家屋やら樹やらビルやら噴水やらの
徒競走とすれ違い 手を交差させ
まどろむは私の姿の私
気が付けば 鈍とセピアと墨灰の
四階建ての立体ホーム
所々が抜染されて そこを法衣の司祭は通る
相も変わらずまどろむは私の姿
谷の街 見た事もない馴染みの街
むやみに巨大な石像が食えない笑顔で言うところ
ケーブルカーは常に下山 二度と上には登れない
つまらなそうにまどろむは私の姿
気が付けば 地元の駅のベータ前
汚いドバイの中年やエンプーサの眷属共が
上へ上へと逃げるのを 目を重そうに
見上げているのは私