帰り道
井岡護

馬なんかより よっぽど速い
家屋やら樹やらビルやら噴水やらの
徒競走とすれ違い 手を交差させ
まどろむは私の姿の私

気が付けば 鈍とセピアと墨灰の
四階建ての立体ホーム
所々が抜染されて そこを法衣の司祭は通る
相も変わらずまどろむは私の姿

谷の街 見た事もない馴染みの街
むやみに巨大な石像が食えない笑顔で言うところ
ケーブルカーは常に下山 二度と上には登れない
つまらなそうにまどろむは私の姿

気が付けば 地元の駅のベータ前
汚いドバイの中年やエンプーサの眷属共が
上へ上へと逃げるのを 目を重そうに
見上げているのは私


自由詩 帰り道 Copyright 井岡護 2008-03-22 02:14:46
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