宇宙こいのぼり
大覚アキラ

五月の地表を離陸したこいのぼりたちは
太陽から吹いてくる風を上手い具合に活かして
素晴らしいスピードで重力圏を離脱した

それはこいのぼりたちにとって
反乱であり革命であった

こいのぼりが逃げてしまって
屋根の上やマンションのベランダには
だらしなく垂れ下がった吹き流しだけが
奇妙な深海生物の死骸のようにぶら下がっている

こいのぼりたちは宇宙空間にすっかり順応し
真空の中を滑らかに泳ぎ
いまや火星あたりまで辿りついたらしい

宇宙で生まれた第二世代のこいのぼりたちは
親たちから地球の話を聞くのが好きで
青い空が見てみたいなあ なんて
無邪気に言っては大人たちを困惑させている

静かな静かな無限の空間を
群れをなして飛んでいくこいのぼりたち

大きく開いた口から“永遠”を呑みこんで
尻から“無限”を垂れ流しながら
こいのぼりの群れは飛び続ける


自由詩 宇宙こいのぼり Copyright 大覚アキラ 2008-03-21 12:43:32
notebook Home 戻る
この文書は以下の文書グループに登録されています。
SEASONS