生活の 静かな
水町綜助
・
痣のある猫がいて
部屋の中に僕といる
・
ベランダで風に
煙草を吸っていると
くるぶしに柔らかい体が触れる
・
敷きっぱなしの布団に座り
壁に凭れ
天井を見ていると
僕の体の
落ち窪んでいくところに
右足から入って丸まり
うめる
横たわって腕を投げ出せば
二の腕に顎をのせて
目を細めている
・
トイレから出ると
ドアの前で少し首を傾げて
・
台所でコップに水を汲み
静かな音を飲んでいると
シンクの横に柔らかく飛び乗って
喉の動きを見上げて
・
眠ると胸の上が少し苦しい
・
こんなふうに求めている
その理由はやはり僕にはどうでもよく
飲んだ水が体に落ちてゆくように優しい
そのように理解して
僕は
僕の留守の間のことを
すこし考える