シェイシェニィソンウォッダリーウー
砂木

三月とはいえ まだ雪の残る駐車場から
会社の玄関に入ると 大きなスーツケース
今日 帰国する中国の人達の荷物
十名の三年間 勤めた生活がまとめられてある

タイム・カードをおしてロッカーに行きかけると
三人連れで歩いてきた彼女が 抱きついてきた

お世話になりました
元気でね 気をつけてね

一瞬の抱擁 そのまま
また三人連れで 歩き去る
三年と決まっている出会い
わかっている でもちょっとふらつく

ずっと前 とても仲良くしていた子が帰った時
意気地のない寂しさに襲われたので
三年で帰るとわかっている人達とつきあうのは
もう ほどほどにしようと思った

中国語を教えて貰ったり
料理をおすそわけしあったり
相合傘で歩いたり
思い出がすべて悲しみになるのは堪えられない
だからそんなに仲良くしたつもりはなかった
けど 彼女はまったく思いがけなく親しみをみせた
仕事で困っていると 私がやるよ と言ってくれた
大丈夫 自分でやるよと 笑って言ったけど嬉しかった
ほんの少しの思い出 すぐに忘れられるはずなのだけど

朝 私をみつけて まっすぐにのばされた手に包まれて
中国から家族のために働きにきて 日本の田舎で
毎日毎日 集団の中 真面目に生活して
修練を繰り返した暖かな心 
私もつい抱きしめてしまった
家族と離れてよく頑張った 綺麗だよ

別れの悲しみは仲良くするほどつらい
でもまあ すぐに忘れていけるだろう
いつまでも悲しむ出会いではなかったはず

やさしい言葉と抱擁をありがとう
旦那様と 仲良く幸せに






自由詩 シェイシェニィソンウォッダリーウー Copyright 砂木 2008-03-20 10:32:27
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