円卓会議
六九郎
黙祷やめ
鷲をかたどった壁のスピーカー
総統のくぐもった声が響く
はるかアンデスから届く寂しいその声
俺は目を開けて壁に並ぶ写真を見上げる
新しく、一番右に掛けられた男の顔
ともに苦しく厳しい訓練をくぐり抜けた仲間達
2段ベッドの上下で語り合った将来の夢
円卓の端でプロデューサーは今週の視聴率を発表する
監督とシナリオライターはひっそりと無言の失望を交わす
責任の追及に怯えながら腕を組み瞑目する大幹部
資料のレジュメを配る上司には腰の低い司会役の班長
冴えない数字の蔭で
今週も死んでいった多くの無名戦士達
首領と組織のために
自ら進んで命を投げ出した男達
そうすることが男の生き方だと信じて疑わなかった奴等
スポンサーの顔色を窺うことはあっても
部下を死地に送り出す部隊長の心情を慮ることはないであろうプロデューサー
会議は進む
形ばかりの反省と
立案者の自慰的作戦と
まあそうは言っても
いよいよ来週は俺の番だ
何者でもなかった俺が
何もなすことなく過ごしてきた俺が
与えられた最後の舞台
よろこんでこの身を捧げよう
望むのは
純粋な悪を
邪悪でもなく
醜悪でもなく
俗悪でもない
ただ純粋な悪を
スポンサーやPTAや世の良識に縛られない
俺らしい純粋な悪を
日本のどこかのチビッコの胸に残して
仲間とともに壁に並ぼう
俺の名は電気怪人クラゲダール
ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ、、、、、、、