一周忌
ゆるこ

湿った夕べ
父の洋服をたたむ
生前の匂いは嫌いだったが
今では柑橘の香りの中で探してしまう


おいおい、そんなんじゃ
だめだろう


酒と、煙草と、スルメと、深夜
私が刻む単調な世界が
ふいに孤独を帯びたと思ったら
いきなり砂嵐が起こった


今から車に乗って
知らない町に出かけようとする弱さを
紫煙越しに見られた
その濁った瞳は。

何を、どうして、どうやって。



あの頃は、
一体なんだったのだろう

ここにある薄汚れたサラシは
伸びきった2着500円の丸首のシャツは

一体、

ああ



鼓動とともに流れる
紫色の私が
部屋をうめつくして
消える場所を探している


こんな小さな心は
あの香りで洗われる
諭される

(許される)





手を伸ばした。

真夜中だった。
 
窓越しの高速で。

クラクションが鳴った。


自由詩 一周忌 Copyright ゆるこ 2008-03-19 23:37:48
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