エルゼの旅に寄せて
AKINONA

エルゼ、美しい人よ
お前は今頃遙か異国(とつくに)の
酒と水煙草の煙の香る市場を
鈴のように軽やかに歩んでいるのだろうか
お前の肌のように滑らかな陶器や
砂漠の砂の香る色鮮やかな絨毯
そして口元に妖しい笑みを浮かべた
鈍色(にびいろ)の女神像の傍らを通りぬけ
精巧な銀細工を高値で売りつける露商の老人とも
楽しく語らっているのかもしれぬ
ああ、不揃いな石畳の上に
お前の懐かしい木靴の音が響くのが
この老いた耳にも聞こえてくる様だ
そして立ち並ぶ尖塔(とう)から聞こえるのは
厳かなコーランの調べ
白いモスクの壁に描かれた聖典の文字が
太陽の光を浴びて鮮やかに浮かび上がる
お前はそっと路地の端に寄り
長い睫を伏せる
巡礼の旅人達の祈りを妨げぬようにと
エルゼ、しなやかな腕の水先案内人よ
冒険心に富んだ美しい人よ
いつか私も連れて行っておくれ


前作はこちら「エルゼ、美しい人よ」
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=80392


自由詩 エルゼの旅に寄せて Copyright AKINONA 2008-03-19 22:42:59
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