春の自動車学校
服部 剛
休日の昼過ぎ
先月から通い始めた
自動車学校へゆくと
校内のすべての車は停車して
教習コースの道に並ぶ
紺ブレザーの教官たちが
にこやかにキャッチボールをしていた
長老の校長は
バットの代わりに杖をかまえ
若い教官の手がすべった
内角攻めのボールによろついて
笑いながら怒った顔で
杖を振り上げびっこをひいて
ぎこちない突進をする
周囲の教官たちは
どこ吹く風というふうに
小気味よく
あちらこちらでボールを投げる
ぱん ぱ ぱん ぱん
いくつもの白球が
グローブに納まる
乾いた音
教習コースの背後に広がる
山々にうっすら
桜の蕾は色づいている
小春日和の
自動車学校