十二月の階段
月見里司
階段は夜よりも昼のほうが暗かった、上下左
右に伸びた立体駐車場が、がりがりと音を立
て始めている、埃のかたちをした日差しは鉄
柵で刻まれて、誰もが忍者かシマウマのよう
なシルエットになっていた、足音をひそめる
ようにして、ばつの悪そうな兄妹とすれ違う、
すこし急ぎ足で電柱の間隔を数えている、海
の方角に雲が出ているときは、太陽がしばし
ばそちらに寄りかかるようにして沈んだ、様
様なカンバンが山積みになり、東にも西にも
駅がある、頭上にある階段を上れば近道、最
寄のコンビニエンスストアまでは電柱十二本、
記憶にある階段ではいつも誰かが踊っていた
から、大きくなってからも踊り場という言い
かたに疑問がなかったのをおぼえている、年
下の子がくるくると回るその前をさえぎらな
いように通り過ぎた、笑い顔が続く、手が伸
びてこないことにはそれなりの理由があった、
今も段数を数えながら上っている、かならず
終わりを右足にするように、ずれたときは一
段飛ばして調整するのだ、うっかり左足で上
り終わったときに吹き抜けるコンクリートで
じゅうぶん冷やされた風、消える外燈と、十
二月の階段は町のように氷点下に沈んでいく、
//2007年12月8日 poenique「詩会」提出 非改稿版