中心の喪失
アハウ

き・は・く・な 拡散
中心を失い
弱弱しくて うごけない 自我

蜘蛛のように 空中に どっかと巣を張り
心臓の位置を しっかり定めて

あらゆる事象に 言葉を投擲する

淡い春 木々の叫び
触れた夏の葉 秋の透明
枯れ色 冬のアケビ

自分を薄めて
物体と同化してしまう事なく


蜘蛛のように己の節くれだつ肢体を定め
事物に言葉を照射する ことば ことばを

射止めるのだ!

すると出来事は
僕の前に膝を折り
礼拝して その腹を見せる

そして 愛撫
信愛の情で
語り始めている ことばが

事物は言葉に纏わりついて
戯れを始めた

心臓で見て
目で追って
書く

この春をスケッチ

き・は・く・な拡散は自我を弱めるから

中心を定め
撃ち抜く

そんな時に限って

手の中に小鳥は落ちて囀る

その春を



自由詩 中心の喪失 Copyright アハウ 2008-03-17 20:17:45
notebook Home 戻る