春は来る
松本 卓也

会社の屋上から見える山が
今日は少しだけ近くに見えた

霞がかった空を
悠然と跳ね烏が
羨ましくて仕方ない

肩や腰だけじゃなく
心も重い溜息の日曜日
遠くから聞こえる笑い声に
何とも現実味が無くて

時が駆け足で過ぎていく
生きている実感もないまま
春が訪れようとしていて
桜開花予報を聞くたび思う
今年もまた花を愛でる余裕も無く
ただ過ぎていくんだな

押し流されていく事情に
明確な現在が形成されていて
歩き行く人達を眺める視線は
何処か遠い世界を見つめるよう

翼を生やす事ができるんじゃないかと
無邪気に信じていた時期もあった
今はただ自立を守るためだけに
季節も忘れて動き回っている

苦笑いを浮かべたところで
時間は止まってくれやしない
今年も春がやってくる
置いていかれた夢を忘れながら


自由詩 春は来る Copyright 松本 卓也 2008-03-17 00:09:18
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