卒業式
たもつ

 
父は毎日仕事で帰りが遅く
平日は構ってもらえなかった
父は日曜日になるとキャッチボールをしたがり
僕はよく公園に連れて行かれた
普段からあまり活発な方ではなかったので
あまり楽しくはなかったし
実際に楽しそうには見えなかっただろう

それよりも僕は父の布団に入ることが好きだった
休みの日は早起きして父の布団にもぐりこんだ
良い匂いがした
いま思えば体から分泌される汗とか
そんな類の匂いだったわけだけれど
丁度良い温かさが気持ちよかった

そんなところまで遺伝したのだろうか
休みの日になると娘は朝早く起きて
布団にもぐりこんでくる
正確にいうと僕の、ではなく
妻の布団の中なのだけれど
いい年して恥ずかしいね
とからかっても
知らん顔で寝たふりをする

いい年して恥ずかしいね
いつものようにからかうと
これで最後にするから
小さな声で返事があった
そんな最後の日が僕にもあったはずだった
娘のほっぺたを突っついてる妻にも
今度の火曜日、卒業式



自由詩 卒業式 Copyright たもつ 2008-03-15 10:52:22
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