午後
葉leaf

湿度が照らされないまま
気体は説き伏せられている
そんな午後の高度をさぐって
午前が苦しそうにつぶやく
おはよう、と

 あれはポストですか
 いいえ電信柱です
 真っ赤な電信柱

怒りが舌を出す
破くための服を買う
食べるための彫刻を一つ
地図の中に縫い込んでしまう
机は見えないことをやめる

 小さくなりましたね
 いえいえ、それほどでも
 いいや、小さくてしかも黒いです

開け放たれたドアの
開き具合を分度器で計る
ドアに向かって叫ばれたのは
何時何分何秒だったか
慌てて手を手繰り寄せる

 おはようございます
 はい、こんにちは
 いいえ、おはようございます

街路樹の下に
距離が錯綜している
葉の上に残っていた潮風の裸体を
切り分ける時間の凹凸に
僕はゆっくり手を這わせる
海からの求婚を触知した

 精確な午後ですね
 むしろ合理的な午後です
 いや、具体的な午後でしょう

階段の角をつないで坂を作る
自動車の残り香はむしろ音だと思う
歩道をさまよう午後の苛立ちが
何かを切り抜けながらティッシュを配る
建物同士のしりとりを終わらせる

 食べるの速いね
 死ぬのはもっと速いよ
 ほら、もう死んでるだろ?



自由詩 午後 Copyright 葉leaf 2008-03-15 07:47:00
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