春の雷を聞きながら
右肩良久

 激烈に痙攣する音の舌に舐められて
 君の敏感な乳首が動くなんて
 信じられない僕は老いさらばえた首で
 口を半開きに転がって青い空が
 はたまた青くない空が崩れて降っている今、という
 神話を甘受するしかないけれど
 信じられない
 生毛が光ってはそそけ立つ君の真っ白い乳房が
 啓蟄、畜生の萌芽に濡れながらうねうね動いて
 こんにちわ、という言葉を練り上げようとしている
 そんなことは、許せない
 瞼のない僕の眼に春雷は音の形の粗い春雷は
 「雷」という骨張った連続的命題
 ここに兵士は居ませんここに用のないペニスは
 ありません泣けてくるほど立つ可愛いペニスは
 ないのだから、どうか君よ、臍へかけて蠕動する
 白くふっくらとした下腹をすり寄せないでくれ
 皿を洗う湯のような熱で僕を流さないでくれ
 雲の片隅にあてのない表情を作る閃光に照らされて
 いきなり裸の足に湿度の高いチーズを匂わせないでくれ
 語らないでくれ黙らないでくれ人とならないでくれ

 断裂
 


自由詩 春の雷を聞きながら Copyright 右肩良久 2008-03-14 20:00:19
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