ノート(ひとつ 撓む)
木立 悟




過ぎては消え 遅れては鳴り
ふたたび現われ 昇りゆく
水たまりの径
ふいの翳り


まだ水は冷たく
指をまわす
見聞きした風
伝えられずに


陽のはざまに揚まり 見失い
指ひとつあたため 午後になる
高く弧を描く
ひとりの音


収まらずに
折られゆくもの
何も言わず
収まりゆくもの


器には羽
金には緑
底に至らぬ 
細い火の群れ


じっとあふれ
見えてくる
夜ではなくなる
夜のはじまり


光に並び
やがて過ぎる音
色は球面
ふたつ手のひら


折りたたまれて収まらず
ただ器の横に置かれるもの
空を映す鏡に乗せられ
暮れの径を運ばれてゆく














自由詩 ノート(ひとつ 撓む) Copyright 木立 悟 2008-03-13 20:06:10
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