物狂おしい
小川 葉
ポケットから詩が零れる
あなた行きのバスに乗り遅れてしかたなく
わたし行きのバスの中だった
乗客のほとんどは
自分に帰るため
僕は少し場違いな葛藤をしてる
発車します
運転士が言うたびに僕は
反射して
屈折して
光はとらえどころなくずれて
伸び縮みする
交差点でバスが止まる
アイドリングストップ
静けさにとめどなく
溢れる
こんな時
抑えてきた何かがきっと
頭をもたげて
くじらのように流れてしまう
床に落ちてしまったのだ
スプーンの音
ウェイターが拾う
ため息を殺して
僕は二人分勘定して
店を出る
するといつも
信号が青になる
零れ落ちた詩の欠片を
ひとつ残らずかき集める
窓の外を見る
わたし行きのバスは
行き先を変えながら
朝まで続いている