死。私が見たのは、
エチカ

?.

埋め尽くされている
埋め尽くされている

混沌の中で
バラとシマウマとミトコンドリアの死体とが持ち上げている
その全てを白い肌の中で殺し、生かし、踊っている右脳の中で


それはそれは愚かに


手を伸ばす先に細胞の破壊の色が見える
赤青黄色緑の潰しあい
渾然たる融合を求めて指揮者は弓を振り下ろす
スローテンポからアップテンポへの飛躍
交差し、あくにまみれてしまった人々
白く絡み合ってもつれるさま


青い鳥が何かにもたれかかるように飛んでいる
呼び声とともにそれらは少女へと変化をはじめ
両の翼からしずくを垂れ流しながら、羽ばたこうとやっきになる
小さく小さくそれは変化している
非常に短く、ゆっくりと全てを選ばずに残されたものの中で
それは非常に小さく変化している

音は乱れる
それが止まない限り、延々と乱れ咲き繰り返し狂う
狂ってしまって乱舞する狂言のように振り回しつづける
獣達に肉を与え、炎をともし、安定と秩序を与えた
毎夜のごとく繰り返される愚劣な夜会のように




?.

部屋の窓から宇宙が見える
ちぎり捨てられたお月様に臓器を与えて生かそうと必死になる
太陽は焼かんと必死になって照らし続けているからそれは腫れる
腫上ってしまった体の一部に魂が宿っている
その魂が音をたてはじめると別の一室では
ガス室で悲鳴が聞こえる
川の流れにさまよいながらうろたえている小石たちのざわめきさえも聞こえる


もがいている もがいている


あえぎ苦しんで叫んでいる音が響き渡る小屋の中
草むらの中で産み落とされる魂
押し付けられた空間の中に密着を迫る肉体の愚かさときたら!
埋没して全て見えないように沈んでいく
宇宙なんかから見たら
それは全て埋没して青く青く鈍く丸い一個の星に見えるのに

「窓を開けておこうひどい悪臭だ
         出し尽くさなければ」



?.

鳥が飛んでいる鳥が飛んでいる

どこまでもどこまでも小さくなって
どこまでもどこまでも大きくなって
次の瞬間、紙くずみたいに吹き飛ばされた

ぴゅうっと。
革命が起こりました革命が四時の方角です。
限りなく落とされる爆撃機の音を聴きながら自転車をこいでいる。
鯨が海からこちらを覗く
角を隠した白装束の娘達はいつも嫁ぎ先を知らない
知らずに海へ帰る
散らばった白い液体にまみれて
海に帰る
深くに沈み、遠くに喘ぎ
そのこだまする音楽はいつも止まない
私をいつも通り抜けて
私を深い深いところまで陥れて
ピアノの旋律の響くことの無い真っ暗な闇
目を閉じて口をふさいで鼻をつまんで
全てを閉じて埋め尽くす


そう、
たとえば 死、


私が見たのは。




自由詩 死。私が見たのは、 Copyright エチカ 2008-03-10 23:44:01
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