引っ越すひと
恋月 ぴの

一枚の写真のなかで私
笑っていた
卸したての制服は似合っていないし
表情もなんだかぎこちない

引越しの準備とかで慌しい最中
久しぶりに開いてみた
アルバム
こっちへ出てくるときに母が持たせてくれた
高校三年間の思い出が詰まった
一冊のアルバム

赤い表紙を一度も開くことは無かった
あの頃の私を忘れようと
精一杯の背伸びでもしていたのか
置き去りにしたかった
忘れようとしていた

だけど私は私に過ぎないのだと
素直に認める難しさに立ち往生したまま
この四年間、何一つ変えられなかった

もう無理しなくとも良いんだよね
どんなに遠く離れていても感じられる
母の優しさは気付かせてくれた

私が私で無くなる夢を追いかけるよりも
大切なものがあることを

見守っていてください

もうしばらく私なりに頑張ってみます





自由詩 引っ越すひと Copyright 恋月 ぴの 2008-03-10 20:45:03
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