きれいな空を映したどぶ川
水町綜助
瞼に
羽毛が触れ
小説がひらいては
落丁を
集める
白く、集める
からすもきえてしまう
昼
窓を
ひらくように
さようならを
後にするなら
部屋の中には
もう誰もいはしない
唇に浮かべるよりもはやく
捨ててしまって構わない
風の線を読め
列車の遠くはしるようだ
光を嗅げよ
何がほしかったか
震えるように
水を飲みな
葉の繁るように
あたらしさを
よろこべ
土の上を
歩く
タールだろうと
生まれて
そして橋を渡る
ほら見なよ
どこまでも
南に走るどぶ川だよ
晴れ渡った、空だ
緑のかすかにゆれる水面に
泣きそうなくらい
きれいな空が映りこんで
南の果て
遠く
伸びているだろう