点と線
喫煙変拍子


見渡す限り 真っ白な地面の上で
彼女は華奢な足と もっと華奢な腕を伸ばして
大の字に寝転がって 口におもちゃのピストルをくわえて
太陽に押しつぶされるのを待っている


   ぐぅーぐぇんごぁぐぅぐぃがぁごぉ
   ぐぅーぐぇんごぁぐぅぐぃがぁごぉ
   ぐぅーぐぇんごぁぐぅぐぃがぁごぉ
   がぁがぁがぁがぁ

   僕?僕は別に好きでも嫌いでもないんだけど


暇だから僕は 指の先を奥歯で引っ掻き
草の上に 赤色の数字を書く
それは僕の右側の心拍数で 別に
彼女が寝返りを打つたび加算される それだけの代物


冷たい風が吹くから 眼を閉じているんだ
冷たい風が吹くから 眼を閉じているんだ


チ ト タト チ ト タト 



うろつくトンボの匂いを手で払って
そのついでに四方八方の空気を切るのは
別に僕を探しているからではなく

   みぞおち撫でなくても大丈夫全然 血なんか出てない

膝の頭を自分で叩いて
反射を楽しむついでに無理矢理
足で四方八方の空気を蹴るのは
別に僕を探しているからではなく

   ぐぉーぐぃがぁぐぃがぁぐぃ   空気が嫌い  だから



チ ト タト チ ト タト 



ちょうど1年前、彼女の目は、望遠鏡越しの太陽に焼き殺された
         (知っている世界中の人みんな知っている)
全てが点と線にしか見えない彼女は別に
僕の表情を100%予知できるから何も問題は無い

問題は

問題

問題は
そのころ彼女の生理が2週間周期になったこと
それで僕がセックスを諦めてしまったこと


   ぐぅーぐぇんごぁぐぅぐぃがぁごぉ
   ぐぅーぐぇんごぁぐぅぐぃがぁごぉ
   ぐぅーぐぇんごぁぐぅぐぃがぁごぉ
   がぁがぁがぁがぁ


もし僕が 線なら 偶然が好きだと
もし僕が 点なら 偶然が嫌いだと  

言えたに違いないそれだけたかがそれだけの  こと



見渡す限り 真っ白な地面の上で
 (それは別に強烈な日光が目に焼きついているからではなく
    本物の白い草が繁殖してい チ ト タト チ ト タト)

華奢な足と もっと華奢な腕伸ばして
 (華奢という言葉は彼女が喜ぶから使ったのであり
     僕は別に他の女性よりも チ ト タト チ ト タト)

大の字に寝転がって 口におもちゃのピストルをくわえて
 (この場合の「おもちゃ」とは別に殺傷能力の有無ではなく
      それを タタン タタン タタン タタン トントン)



太陽に押しつぶされるのを待ちながら


チ ト タト チ ト タト


少し震えてた



自由詩 点と線 Copyright 喫煙変拍子 2004-06-30 21:54:31
notebook Home 戻る