他力本願
榊 慧





ちょいとちょいと、

他力本願であつかましいが、誰か助けてはもらえませぬか。





(これはデジャヴになる。)
(どうかこないでくれないか。)
(暗くて気味悪くて気持ち悪い。消えてなくなれ。)






俺は多分これからも、不快感を常にともなってすごしていくんだろう。

いやだけれども、どうしようもない。

そして今までも今もこうだったから、これからもこうか、もっと酷いことしかないと考えると、

死にたくなる。ほんとどうしようもない。仕方がない。





(記憶は、どこまでも邪魔をする。)
(きらきらはとおくて 不純なあこがればかり。)
(のみこんで おもくしずむ きたないもの)




ぐじぐじでみっともない俺のゆううつ。

とおいひとと、会いたい夜。





(ああ夢よ良き友よ、)
(ちょいとちょいと、)
(他力本願であつかましいが、誰か忘れさせてはもらえませぬか。)
( いやな奴かもしれません。でも慰めてはもらえませぬか。)




ちょいとちょいと、

他力本願であつかましいが、俺のつうじょうはおかしいんだと肯定してはもらえませぬか。

此れといって、嘘ではないのはたしかです。





(それでも死ねないのは、ただの未練でしょう。)
(そうです、未練です。未練だけが、俺を生かすのです。)
(大げさな、と仰るかもしれませんね。)
(けれども、決して大げさというものでは、ありませんのです。)




貴兄、云えぬ言葉を云えなかったとおもうのは、

充分やさしいことだとおもうのです。

なぜなら、そこまで考えてあげているのと、そういうやさしい人が、近くにいるからだと、

俺はおもうのです。








(俺には、たぶんこないだろうけど。)
(飛んでいけたらと考えるのは、なにゆえでしょうか。)
(そこまでやさしい貴兄も、くるしい事も、ある筈なんだろうに、)





無力感、無能感にくるしまされるのは、宿命でしょう。

ああ、そういえば宿命の意味を俺は知りませんが。

なにゆえ、俺はその単語を使ったのでしょうか。甚だ、ぎもんです。






(どれだけ頭をふっても消えないものに、死にたくなる。)
(現在進行形の、記憶は、やはり、邪魔をする。)
(譬えるなら、微温湯のように。這いずりまわって侵食していく。)
(そしてそれはエンドレス。)
(もっとひどい事も、あるのだろうよ。)





明日はとぶわけでもなく、かんがえる暇もあたえずにちかづいてくる。

知っているのは、今はただ、気色悪いあの感触と。

迫ってくるぎらついた嫌なもの。消えてはじけて破裂して。なくなればいい。





(言い訳がみつからない。)
(いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、、、、、、、、)
(、、いや、だあ!)








ちょいとちょいと、

他力本願であつかましいが、誰か助けてはもらえませぬか。

祈るというのは、神がいてこそ、の行為なんでしょうから、やりたくありません。

ですから、懇願、願います。







自由詩 他力本願 Copyright 榊 慧 2008-03-06 00:11:36
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