『鏡』
東雲 李葉

探し物のように夢のゆくえを手探った。
壊れ物のように僕はそれを大事に握った。

―――自分の弱さも知らない僕を君は黙って見つめていた。

昔の影に捕まった。
影踏み鬼は代わらなかった。

―――自分のことさえ分からぬ僕を君は黙って見つめていた。

どこまで行っても崩れる道筋。
どこに行っても解れるあやとり。

―――立ち上がることさえ出来ない僕を君は黙って見つめていた。

三叉路は結局ひとつに繋がっていた。
選択肢なんて見せかけだった。

―――立ち止まったままの僕を君は黙って見つめていた。

曇ったガラスに放たれた光陰の矢。
行き詰まった思惑が音を立てて崩れ去る。

―――破片が刺さる細い肩を僕は黙って見つめていた。

探し物のように夢のカケラを手探った。
壊れ物のように僕の心は震えていた。

―――合わせ鏡を覗いたように僕は僕を見つめていた。


自由詩 『鏡』 Copyright 東雲 李葉 2008-03-05 14:58:36
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