『マトリョーシカ』
東雲 李葉

誰も本当の僕を知らない。
だって僕にも分からない。
仮面の数を数えよう。色とりどりの笑顔の形。
鏡に映る自分さえ誰かの影を真似しているんだ。
開けても開けても同じ中身の人形みたいに、
かぶっている表面だけがすべてのやつと一緒にしないで。

僕は本当の僕じゃない。
だけど誰も言わないだけ。
着せ替え人形の感覚で取り替えのきく性格なのさ。
どれなら君に似合うかと一生懸命考えてる。
彫られた笑顔貼り付けて素肌の上で泣くように、
きっと本当のことなんて誰にも言えない。


だけれど本当の僕は行き着くところ僕でしかない。
どんなに誰かを演じても貫き通った芯は変わらない。
開けても開けても同じ中身の人形みたいに、
代わり映えの無い自分でいたくないのに。


結局僕なんてそんなもんだ。
「分かってるって」だけど何も言わないだけ。
鏡の中の自分は皮をかぶったお人形。
剥がしてみたって同じような自分が顔を出す。
開けても開けてもそこには僕しか入ってないよ。
いつか誰か見えてくるかな。それともずっと僕のままかな。

結局僕は僕なんだ。
「本当は知っていたよ」
だけど信じたくなかった。
つまらない自分でいたくない。百の顔を持ってみたい。
誰も本当の僕を知らないで。
けれど本当って何だっけ…?

開けても開けても違うサイズの同じ自分。
どんなに仮面をかぶっても僕は僕にしかなれない。
開けても開けても小さくなってく同じ自分。
結局のところ僕はただ空っぽな人形だったよ!


自由詩 『マトリョーシカ』 Copyright 東雲 李葉 2008-03-05 14:57:33
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