脱皮
佐々木妖精
、の入口に従えたのは、その言葉が正しいと思えたからだ。
だから不安と向かい合って椅子に座った。
クッションに針が仕込まれているなどとは思いませんし、仕込まれていても構わない。
この言葉が真逆の意味をもつ。
どうせときっと。
それだけの違いが大きな意味を持つ。
裏切ったのはわたしだ。
どうせときっと。
それだけの違いで振り切れる。
正しいは動く身体だ。
私の身体は受け盗った正しさでできている。
だからこそ雨は冷たく打ちつけ、涙が悲しく伝うのだ。
意志が新しい身体を産むなどということが起こり得るだろうか。
私はいまだに、この身体を脱ぐことができないでいる。
「分からないからど好きだ」これだけ言うのに少し考え込んだ。
「分からない『 』好きだ」
からとけれどの強さを損なわぬまま、同時に表せる接続詞を探した。気付いた。
どこを向いても寄り道と道草しかできないということに。
私が気になるのはシュレディンガーがなぜ猫を使ったのかということだ。
あの思考実験の中で最も理解できない記号は猫だから。
必然性を探り当てる作業は楽しい。
この昼休みみたいなものだ。
たった30分かそこらの休みがありがたい。
今日は学食であえてAランチかな。
そんなささやかさに溢れた作業。
このまま家に帰れば、もしかしたらマンガでも読めるかもしれない。
そんな可能性まで感じさせる。
分からないは分かるより可能性がある。
いつか、
分かるかもしれないし、
いつまでも、
分からないかもしれない、
可能性、
は往々にして
不安、
を招く。
しかし、これはきっとをどうせに置き換えることで解決できた。
どうせ不安がくるのなら、分からないまま受け入れて勝手にさせよう。
そう決意した時、はじめて
あなたの顔が見えました。